コンパクトなクロスカントリー車の先駆け、スズキ・エスクードの魅力と中古車市場での現状を探る

エスクードというと、ある一定の年齢層の方は「モンスター田嶋がパイクスピークで優勝した…」という、あのクルマを思い出すかも知れません。そう、1994年に登場し、翌1995年には総合優勝を成し遂げた、あの強烈なスズキスポーツ・ツインエンジン・エスクードです。900kgの車体に、450馬力のエンジンを前後に一基ずつ搭載し、合計900馬力という。もはやほとんど電動RCカーのような規格外のモンスターマシンでした。これは歴史的に見て唯一成功したツインエンジン・レースカー、とも言われているらしいです。その後もエンジンこそ一基になったものの、1トンを切る車重に2.7リッターV6ツインターボで1000馬力、なんていうとんでもないエスクードがヒルクライムレースを戦い続けていました。

って、もう皆さんおわかりでしょうがこのエスクード。なんとなく見た目がエスクードっぽい、っていうだけで、実は中身はまったく市販車のエスクードとは関係の無い、純粋なレーシングカーでした。実際のエスクードは1988年、「クロスカントリーセダン」というコンセプトで登場した「乗用車のように普段使いできる四駆」です。今回はこのスズキ・エスクードという車種について、その沿革と魅力、中古価格、リセール価格などをご紹介したいと思います。

エスクード、歴代モデルの移り変わり


出典:ウィキメディア

初代エスクードは1988年、1.6リッター直列4気筒SOHCエンジンを搭載したコンパクトなSUVとして登場しました。当時はまだダイハツ・ロッキーなどが登場する前で、このクラスはほぼ空白地帯。そう、まさにこのカテゴリーを切り拓いたのがエスクードだったのです。

バブル経済にさしかかろうという時代。レジャー、特にスキーなどのウインタースポーツも盛んで、四輪駆動のクロスカントリー車がもてはやされていましたが、一方で乗り心地や燃費、街中での取り回しなど使い勝手の悪さも言われていました。そんななか、頑丈なラダーフレームを備えた本格的なクロスカントリー車ながら、コンパクトな車体に1.6リッターエンジンを搭載した、比較的リーズナブルで軽量で燃費のいいエスクードは大ヒットしたのです。そう、実際の車重も1010kgからノマドの1210kgという軽さでした。

直線的でスマートなスタイリングと、ワイルドさを抑えた乗用車のような内装。フロントはストラット式の独立懸架、リアはセンターAアームを採用したリジッドアクスル。副変速機付のパートタイム4WDといった、内容としては本格的なクロスカントリー車という、このパッケージングの上手さもあって、販売が好調だったのでしょう。

翌1989年にはヘリー・ハンセンやゴールドウインといったスポーツブランドとのコラボモデルもリミテッド版として登場しました。リミテッドと言いながら、好評だったのかその後ヘリー・ハンセンリミテッドはたびたび設定されます。1990年にはエンジンが8バルブから16バルブになり、82馬力から100馬力にパワーアップ、ATも3速から4速になりました。またホイールベースを延長して5ドアになった「エスクード・ノマド」も追加されました。

1994年にはスズキ初の2リッターV6エンジン、2リッター直4ディーゼルを搭載したモデルが、さらに1996年には2.5リッターV6エンジンを搭載したモデルがそれぞれ追加されています。またこの頃にはマツダに「プロシード・レバンテ」としてのOEMもありました。1997年、2代目に切り替わって生産を終了しました。

2代目エスクードは1997年11月7日のフルモデルチェンジで誕生しました。初代と同じくラダーフレームを持ったクロスカントリー車で、リヤサスペンションが5リンク式に変更され、また時代の流れで全体にやや丸みを帯びたデザインになっています。2000年には2.7リッターエンジンを搭載した、3列シート7人乗りのグランドエスクードが、また2002年にはデザイナーの山本寛斎が監修した「KANSAI」が発売されました。2005年4月、3代目に切り替わって生産を終了しました。

クロスカントリー車からクロスオーバーSUVへ


出典:ウィキメディア

3代目エスクードは、ラダーフレームをモノコックボディに溶接したビルトインモノコックタイプ(スズキではビルトインラダーフレームと呼んでいた)になりました。リヤサスペンションもマルチリンク式の独立懸架が採用され、またそれまでパートタイム4WDだったのがフルタイム4WDになっています。エスクードはこれまでクロスカントリー車というカテゴリーでしたが、このモデルからクロスオーバーSUVになったとされています。

エンジンは2リッターと2.7リッター、ボディは5ドアのみという展開でした。またこの頃にはこのカテゴリーの国産車はほぼATのみになっていましたが、エスクードは2リッターモデルのみMTも選択することができました。2006年には1.6リッター・3ドアの「1.6XC」というグレードが追加されました。これは5速MTのみ、というこの時代としてはかなり割り切ったモデルでしたが、翌2007年には廃止されてしまいました。またこの年にはスキー用品などで有名なサロモンとコラボレーションしたサロモンリミテッドも発売されています。これは翌年以降も限定車として何度か登場します。

2008年のマイナーチェンジで、エンジンが大型化され2.4リッターと3.2リッターの二種類になりました。この3.2リッターの3.2XSでは車重は1710kgに達し、全長4420mm全幅1810mmというもはやかなり大型のSUVでしたが、翌2009年にエスクードが2.4リッターに単一グレード化したのに伴って姿を消します。2015年、4代目の発売に合わせて生産が終了しますが、エスクード2.4として販売は2017年まで継続されました。

4代目エスクードは、それまでとは大きく内容が変わりました。ラダーフレームを廃止してモノコックになり、またそれまでのFRベースからFFベースの4WDになっています。SX4とプラットフォームを共通化したのですね。また、4WDモデルに加えてFFの2WDモデルもラインナップに加わりました。3代目と比較して車重は400kg以上も軽量化され、エンジンもダウンサイズされて1.6リッターのDOHC直列4気筒NAエンジンと、1.4リッターのDOHC直列4気筒直噴ターボエンジンになっています。なお、トランスミッションは6速ATのみです。

以前からエスクードには海外生産のビターラというモデルがありましたが、この4代目からはエスクードもハンガリーのマジャールスズキが製造するようになりました。つまりスズキブランドの輸入車という形です。アイドリングストップ機能、ブレーキアシスト、アダプティブクルーズコントロールなど現代のクルマとしての装備も充実しました。2018年には1.6リッターNAエンジン搭載車が廃止され、以降は1.4リッターのターボのみになっています。

中古車市場でのエスクードと、リセール価格は?

現在、中古車市場でのエスクードは、ほぼ3代目以降が中心になっています。それ以前のモデルはタマ数が少なく、また最近の旧車人気もあるのか程度のいいものはそれなりに価格も高いようです。例えば1993年モデルの初代コンバーチブルなどは60万円程度の価格が付いていますが、これは2005年から2007年辺りのモデルと同等かやや高い水準です。

ボリュームゾーンは2006年辺り以降で、2010年くらいまでは70万円台、それより新しいものは徐々に価格帯が上がり、4代目に切り替わった2015年モデルでは130万円台から190万円くらい、まだ最初の車検を迎えていない2018年辺りだと170万円台以上から200万円台前半のようです。

リセール価格は、2年落ちで140万円程度、3年落ちで130万円程度、5年落ちだと80万円程度、7年になると45万円辺りというデータがあります。新車価格を平均的な現行モデルの250万円として計算してみます。

2年後 56パーセント
3年後 52パーセント
5年後 32パーセント
7年後 18パーセント

モデルチェンジの時期もありますし、またエスクードの場合は現行の4代目と3代目以前とではほぼ「違うクルマ」という事情もあって単純な比較は難しいかも知れません。また、中古市場でのタマ数があまり多くないクルマですから、それぞれのグレードや状態、また買い取り店ごとのばらつきも少なくないことが予想されますね。

[ライター/小嶋享]