伊達軍曹のここだけSUV談義 第8弾。「自然吸気エンジン」は「ターボ」よりも速くない?面白くない?

知人からSUVの買い替えに関する相談を受けた。

彼、というか仮名「Q君」としておくが、Q君が現在乗っているのは先代BMW X1。しかし2人めのお子さんが近々生まれるにあたり、X1では少々手狭になることが予想されるため、もう少しだけ大きめなSUVに買い替えたいのだという。

この友人に最適なのは間違いなく現行スバルフォレスターだが

Q君が考えているさまざまな要望や課題、あるいは彼や細君の嗜好などをヒアリングしながら、「この場合に最適なのは現行スバル フォレスターであろう」と筆者は結論づけた。

先代BMW X1よりちょっと大きいから家族で使うのにも便利で、最新世代のアイサイトが付いているため安全かつ楽ちんであり、それでいていわゆる「走り」もなかなかのもの。というか、かなりのモノ。オンロードだけでなく悪路や雪道も得意。そんでもって価格もそれほど高くはない。

現行フォレスターの場合、上級グレードの「Premium」が302万4000円で、なんだかんだの乗り出し価格は360万円ぐらい。しかしそこからおそらく40万円ぐらいの値引きはあるはずなので、正味の総額は「320万円ぐらい」に落ち着くだろう。

決して安い買い物ではないが、モノの良さから考えれば十分納得できる、いわゆる「リーズナブルなお買い物」ってやつである。

ということで、筆者はQ君に言った。

「……とまぁ以上の理由により、貴君は現行型のスバル フォレスターを買うのがベストではないかと僕は思う。上級グレードのPremiumにするか標準のTouringにするか、あるいはモーターも付いてるAdvanceにするかは、ディーラーで詳細を詰めながら決めれば良い。とにかく、結論として何らかの現行フォレスターを買いたまえ。それが、君たちご家族にとっての幸せへの道だ」

そう言い切ったうえで、筆者はとっと自宅に帰ろうとした。なぜならば、18時からは東京ヤクルトスワローズの試合をCS放送で観なければならないからだ。

「ターボ無しのフォレスター」は本当に魅力半減なのか?

だがQ君はまだモゴモゴと何かを言っている。なんだ? 文句や疑問があるなら老人のようにモゴモゴしてないで、男らしくハッキリ言いたまえよ、ハッキリ。

「…ターボが」

は? ターボが? ターボチャージャーが何だというんだね?

「……現行型のフォレスターは、それまではあったターボ付きエンジンがなくなっちゃったから、あんまり面白くないって話を……」

そんなたわけた話を誰が言っていたのだ? 君の知人のスペックオタクか? それともどこかの自動車ヒョーロンカか?

「や、ちょっと覚えてないけど、とにかく誰かがそんなことを言ってたから……」

ふざけるな! と怒鳴ろうと思ったが、よく考えたらQ君を怒鳴りつけたところで意味はない。Q君はどこかで聞いた話をそのまましゃべっているだけなので、なんの責任もないのだ。そのためわたしは一度深呼吸をし、Q君に語りかけた。

Q君よ。どこで何を聞いたかは知らないが、その話は忘れていい。

確かに現行型のスバル フォレスターは、それまでのイメージリーダー的存在だった「強力な2Lターボエンジン」を廃し、代わりに2.5L自然吸気の水平対向エンジンを主たる原動機として採用した。

そのことをもって「フォレスターもつまらなくなった」とか「がっかりした」とか言ってる人がいたり、そのようなことを書いている職業ライターがいることは、自分も知っている。

でも、そんな意見を鵜呑みにする必要はまったくないのだよ。なぜならば、理由はふたつある。

2.5Lの自然吸気エンジンは十分以上にトルクフル

理由のひとつは、2.5Lの自然吸気エンジンであっても現行フォレスターは十分以上に「速い」からだ。

もちろん、正確に計測されたタイムを競い合うサーキットと違い、我々が行っている日常生活のなかでは「速い」とか「速くない」とかいう話は相対的なものでしかない。それは人それぞれとしか言いようのない「感覚」にのみ基づいている指標なのだ。

それゆえ、自然吸気2.5Lを積むフォレスターのことを「遅い」と評する人が間違っているわけでもない。その人は、確かにそう感じるのだろう。よく知らないが。

だから、いちばんいいのはQ君自身がスバルのディーラーに行き、現行型のフォレスターに試乗してみることだ。そしてその際に、安全な局面でちょっとアクセルを踏んでみたまえよ。隣に座ってるディーラーのセールスマンは面食らうかもしれないが、なあに大丈夫だ、放っておけばいい。とにかく、危なくない、見通しの良い空いてる国道とかで、一回ぐらいはガツンと踏んでみたまえよ。ただしレーダーに気をつけながら。

すると、たぶんすぐにわかるよ。「……この車、普通に速いじゃん」ということが。

だがもちろん、そのQ君だってわたしから見れば他人であるため、速度や加速感についての感じ方は、わたしとずいぶん違う可能性もある。わたしは2.5L自然吸気のフォレスターを「十分速い!」と感じるわけだが、Q君は「そうでもない」と感じる可能性だって大いにあるわけだ。

それなのになぜ、わたしは「乗ってみたまえよ。乗ればわかるから」と余裕をぶっこいていられるのか?

それが第二の理由なのだが、「時代が変わったから」なのだ。

もはや「280psのターボでぶっ飛ばす」という時代じゃない

20年か30年ぐらい前の日本では、まだまだ「スピードに対する憧れ」が強かったように思う。もちろん安全運転に徹しているドライバーもその当時から多かったが、それと同時に、かなりぶっ飛ばしているドライバーも多かったのだ。

それは、時代がそうだったのだ。時代の空気が、当時の彼または彼女に「アクセルペダルをもっと踏め!」と命じていたのだ。そして実を言えば当時のわたくしも、そんなドライバーのひとりだったような記憶がある。

だが今、時代の空気は完全に変わった。「アクセルペダルをもっと踏め!」と命じるような時代神は、もはやどこにもいない。や、いるのかもしれないが、どこかに隠れている。

そしてそういった神がいないものだから、自分の中からも「ぶっ飛ばしたい!」みたいな欲求がふつふつと湧き上がることもない。や、まったくないわけではないのだが、あんまりない。たまにちょこっと飛ばし気味に走れればそれで十分で、あとは普通かせいぜい普通+αぐらいのペース感で、極力スムーズかつ安全に、燃費もある程度は気にしながら走る。

もちろん個人差はあるだろうが、それが2019年半ばのニッポンの路上世界における「おおむねのスタンダード」なのだ。

そしてそういった状況下では、ターボチャージャーが付いいなくても、280psじゃなくても、排気量が2.5Lもあれば「おおっ、十分速いじゃん!」と思えてしまうのが、人間という生き物である。人間は何にだってすぐに慣れるもので、自分の意思や感覚みたいなものをしっかり持っているつもりでも、知らず知らずのうちに「時代」に影響される生き物だからだ。

だから、Q君が20~30年前の古くさい感覚をいまだ強烈に引きずっているような人でない限り、「うわっ、2.5L自然吸気のフォレスターって遅っ!」と思ったり、「ターボがねえとつまんねえなぁ」なんて感じる可能性は99.9%ないと、わたしは踏んでいるのだよ。

「でも軍曹くんのようなド三下じゃなく、有名な自動車評論家が『ターボがなくなったのが残念である。あとCVTもボクはあまり好きじゃない』みたいなこと言ってたし……」

おのれQよ、まだ言うか! ……って、Q君相手に怒っても仕方ないか。まあいいよ。大切なのは、わたしでもその有名な(?)自動車評論家さんでもなく「Q君がどう感じるか?」だ。

なので、そこの環七のところにスバルディーラーがあるじゃない? あそこに行ってさ、フォレスターに試乗してみてよ。それで白黒つけようよ。

「わかった」と言ってQ君は去っていった。

その後Q君とはまだ会っていないため、Q君が2.5L自然吸気のスバル フォレスターについてどのような印象を持ったのかは知らない。

だがこの勝負(?)の結果にはそれなりの自信を持っている、不肖筆者ではある。

[ライター/伊達軍曹]